Webアクセシビリティに関する大喜利 回答案
著
去る11月30日、Web担当者向けセミナー:障害者差別解消法 施行目前!アクセシビリティ対応、なぜ始める?どう進める?で登壇したわけですけども、そのセッション3 ディスカッション「アクセシビリティについて、いまWeb担当者が考えるべきこと」で繰り広げられた大喜利(と企画側では呼んでいた)に向け、個人的に用意していた回答案を覚え書きしておくなど。YouTube Liveの録画を見ていただければ分かりますように、ほぼ用意していた通り受け答えしたところもありますし、そもそも本番で言及されなかった? 問いもあります:
アクセシビリティ確保の端的なメリット・デメリットとは?
- メリット:管理・運用するWebコンテンツの価値・機会・信頼の最大化、Web環境の変化に対する耐久性の向上、そしてコンプライアンス
- デメリット:無い、と力強く言い切りたいところだけれど、新規に取り組む前提において金銭的・時間的・教育的コストが発生すること
取り組みを始めるのに何をどういう順で見たらよい?
- まずは『デザイニングWebアクセシビリティ』を通読していただく
- あとは担当業務範囲に応じて個別かつ柔軟に
- とはいえ、WCAG 2.0の日本語訳は一読いただきたい
- 抽象度が高く、とっつきにくい文章とは思いますが、国際標準なので
- とはいえ、WCAG 2.0の日本語訳は一読いただきたい
- あとは担当業務範囲に応じて個別かつ柔軟に
- 障害当事者のWebの使い方を知っていただく
- 直接、使っている様子を目にできなくても動画がある
- さまざまな人が、さまざまな使い方をしている、その事実を捉えることが大事
- 以後、想像力をもって企画・設計・実装に携われるようになる
- さまざまな人が、さまざまな使い方をしている、その事実を捉えることが大事
- 直接、使っている様子を目にできなくても動画がある
社内の理解 編
「よくわからないから後で」
- 先送りにすればするほど、コンテンツがアクセスされない、利用されないリスクが高まる
- 将来、未知のデバイスからアクセスされたときに、表示・動作に難があるかもしれない
- 障害当事者から合理的配慮を求められるかもしれない
- 意外とやってみたら大したことなかった、ということも十分あり得る
- 大事なのは第一歩を踏み出すこと、踏み出したら歩みを止めないこと
- その最初の一歩が、どんな小さな歩みでも構わない
- 画像にはちゃんと代替テキストをつけましょう、だけでも素晴らしい取り組み
- その最初の一歩が、どんな小さな歩みでも構わない
- 大事なのは第一歩を踏み出すこと、踏み出したら歩みを止めないこと
「知ってるけど、自分たちに関係ない」
- 正直、関係は大いにある
- あらゆるWebコンテンツが普遍的に備えるべき品質だから
- UXの構成要素であり、UIのいち品質だから
- そもそも既に取り組んでいることがきっとあるはず
- 日常的にそれと意識していないだけで、実は立派にWebアクセシビリティ対応と呼べることをしている可能性は高い
- 制作する側でなくとも、いちユーザーとして関係はある
- あなたは絶対に(一時的なものも含め)障害者にならないと言えるのか?
- あなたは絶対に年を取らない自信があるのか?
「分かってるけど、他にやることがある」
- 「すべてのコンバージョンは、アクセシビリティから」
- Webアクセシビリティ・ファーストで考えるべき
- コンテンツにアクセスされなければ、始まらない!!
- Webアクセシビリティ・ファーストで考えるべき
「周りが取り組み始めてからでいい」
- 「周り」とは誰なのか?競合他社か?全人類か?
- 見えないコストを払い、リスクを負い続ける覚悟があるなら、それもひとつの選択肢ではある
- 周りが取り組み始めてもなお取り組まない、と決めているよりは遥かに良い
- 見えないコストを払い、リスクを負い続ける覚悟があるなら、それもひとつの選択肢ではある
- 実は「周り」は既に取り組んでいる
- どのWebサイトでも、何かしらの取り組みはしているもの
- カルチャーとプロセスが備わっているか、アクセシビリティと呼んでいるか、という違いはあるにせよ
- どのWebサイトでも、何かしらの取り組みはしているもの
- そもそも、周りが取り組んでいようといまいと、取り組むべきこと
- たいていの企業、組織には立派な企業理念があるもの。それに照らせば、取り組まなくて良い理由など無いのではないか?
「他の担当者・部署・制作会社がなんとかする」
- Webコンテンツのアクセシビリティは、それにかかわるすべての人の参加・協力が必要
- HTML/CSS/JavaScriptだけで(制作会社だけで)解決できないことは、いくらでもある
- そもそもコンテンツ自体のアクセシビリティを考えないといけない
- HTML/CSS/JavaScriptだけで(制作会社だけで)解決できないことは、いくらでもある
「そのうち国とかGoogleとかがなんとかする」
- 第三者によって根本的なところは解決し得ない
- たとえば代替テキスト......OCRや画像認識の技術は進化しているけれど、本当に他の何か・誰かがあなたに変わって、あなたが意図した通りに代替テキストを付与できるだろうか?
- 完全なるあなたのコピーロボットでも作れない限り実現不可能
- たとえば代替テキスト......OCRや画像認識の技術は進化しているけれど、本当に他の何か・誰かがあなたに変わって、あなたが意図した通りに代替テキストを付与できるだろうか?
- ある程度の省力化は期待して良いが、技術や巨大プレイヤーが「完全に」解決するということは短期的にはあり得ない
- コンテンツを公開する側が主体性をもって取り組む必要性は変わらない
コストとROI 編
「具体的にいくら追加で掛かる?」
- 取り組む範囲に応じて当然異なる
- これから取り組むなら、まずは現状把握をしてみては?
- その後のアクションはさておき、いったんは現状を知ることが大事
- 現状の体制なりパートナーのアクセシビリティ対応力、が測れる
- それによってその後の戦略、戦術の立て方は変わってくるだろう
- 現状の体制なりパートナーのアクセシビリティ対応力、が測れる
- 重要な、ないしアクセス数の多いページを見繕って、WCAG 2.0 に照らしてどれだけアクセシビリティ品質が確保できているか、調査・把握するためのコストを見積もる
- その後のアクションはさておき、いったんは現状を知ることが大事
- これから取り組むなら、まずは現状把握をしてみては?
「投資対効果をどう算出する?」
- WebアクセシビリティのROIを計測することにどれだけの意味があるだろうか?
- そもそもアクセシビリティ以外の要因による影響を除外してROIが計測できるものだろうか?
- おそらくできない(デザインと不可分)
- 企画、設計、開発、あらゆるプロセスに溶け込んでいる
- おそらくできない(デザインと不可分)
- 最低限のアクセシビリティが確保できていない状態で、ROIは計測可能なのだろうか?
- 期待された性能を発揮しない状態でコンテンツを公開しROIを計測したところで、意味はないのでは?
- そもそもアクセシビリティ以外の要因による影響を除外してROIが計測できるものだろうか?
リソースと体制 編
「どんな社内体制をどのように準備すればよい?」
- Webアクセシビリティの確保には、継続性が不可欠
- Webコンテンツは生き物であり、変化し続ける
- たとえWebコンテンツが変化せずとも、環境(ユーザー、デバイス、コンテキスト etc.)は変化する
- Webサイトが存続する限り、アクセシビリティ確保の努力も継続が必要
- 期間限定の組織、プロジェクトではなく、ワークフローに組み込む
- Webサイトが存続する限り、アクセシビリティ確保の努力も継続が必要
- 継続性を担保するのは「プロセス」と「カルチャー」
- プロセス
- 達成すべきアクセシビリティ品質を明確にするためのガイドライン
- ガイドラインで定義されたアクセシビリティ品質をより低コストで達成するための仕組み(テンプレート、モジュール集、CMS、etc.)
- 定期的、ないし不定期にサイト内を巡回し、アクセシビリティ品質が保たれていることを監査するための仕組み
- クローラーと一体化されたアクセシビリティチェックツールを利用できれば理想
- 重要な、ないしアクセス数の多いコンテンツだけでも定期的にチェックできると良い
- 達成すべきアクセシビリティ品質を明確にするためのガイドライン
- カルチャー
- ステークホルダーに対する継続的な教育・トレーニング
- 立場や担当業務の範囲に応じたWebアクセシビリティに関する教育がカルチャーを育む
- なぜ取り組むのか、その理由や動機を誰もが腹落ちしていることが必要
- 進め方については、参加者属性ごとに応じて柔軟にスモールスタート(「小さく生んで大きく育てる」)
- 立場や担当業務の範囲に応じたWebアクセシビリティに関する教育がカルチャーを育む
- ステークホルダーに対する継続的な教育・トレーニング
- プロセス
「どんなパートナーをどのように探せばよい?」
- パートナー(候補)のWebサイトのアクセシビリティ品質を簡易的にでもチェックしてみる
- 積極的に取り組んでいる企業であれば、どこかしらに何かしらアクセシビリティへの言及があるもの
- それと明確に謳っていなかったり、サービスとして提供していなくても、外から見て「わかる」部分はあるはず
- 積極的に取り組んでいる企業であれば、どこかしらに何かしらアクセシビリティへの言及があるもの
- パートナーにもプロセスとカルチャーが必要
- それが備わっているかどうかを見極める
- 品質を確認するプロセス、体制を備えているかどうか?
- 現時点で備わっていなくとも、一緒になって学習・成長する気概があるかどうか?
- 今お付き合いのある業者を何らかの理由から変えられない場合など
- それが備わっているかどうかを見極める