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情報アクセシビリティ・フォーラムに対する違和感と期待

先週末、秋葉原UDXで「情報アクセシビリティ・フォーラム2015」というイベントが催されました。同タイトルのイベントは過去(少なくとも2013年)にも開催されており、そのときにも今回と同じ違和感を覚えた記憶がありますが、自分の覚え書きを検索しても触れていなかったようなので、最近Twitterのほうに書いた内容と重複しますが、敢えてこちらにも書いておきます。その違和感とは、イベントのタイトルと内容のあいだに感じるギャップに起因するものです。

タイトルに含まれる「情報」と「アクセシビリティ」、それぞれの言葉がもつ意味合いは非常に広いと認識しています。ことアクセシビリティに関して、障害者対応という文脈で用いるならば、さまざまな種別の障害(視覚障害、聴覚障害、肢体障害、学習障害 etc.)への対応を包含するのが一般的ではないかと思います。しかし当該イベントについては、全日本ろうあ連盟が主催しているからか、基本的には聴覚障害者への対応に内容を限定してワークショップやカンファレンスが構成されているようです。

そしてWebが社会的に重要な情報インフラとしての位置付けを占めた昨今、「情報アクセシビリティ」のなかでも、Webコンテンツに対するアクセシビリティは、相応の重要性をもって認知されるべきトピックのはず。当該イベントにおいても、その必要性が訴求されて然るべきと思うのですが、ワークショップやカンファレンスの案内を読む限り、Webアクセシビリティに関するプログラムは見当たりません(もっとも、自分は実際にイベントに参加したわけではありませんから、自分の早合点という可能性も無くはないのですが)。

そういうわけで、個人的にはイベントのタイトルと内容に齟齬を感じざるを得ません。自分がタイトルから期待する内容とは、もっと幅広い障害タイプを取り扱うものであり、かつWebアクセシビリティに特化したプログラムを含むものです。フォーラムが目指すものというページにある「効果と今後の展開」のくだりを読んでみても、主催側がフォーカスしているのが聴覚障害者の支援であることが明白なだけに、なぜ「情報アクセシビリティ」のような広い意味合いの言葉をタイトルに使っているのか、気になります。

単純に、幅広い層からの集客を見込んでのことであれば、それはそれで理解できなくはありません。しかし、一部メディアが「聴覚障害者のためのイベント」と報道していることから、情報アクセシビリティ=聴覚障害者に対するアクセシビリティ、との誤解を与えかねないのではと危惧しています。ちなみに、「視覚障害者向け総合イベント」としてサイトワールドと呼ばれるイベントがありますが、そちらは内容が視覚に関するものという紐付けが明確にタイトル名でなされています。

誤解していただきたくないのですが、自分は情報アクセシビリティ・フォーラムを素晴らしい取り組みであると考えています。UDXのような場所を借りるだけでも相当なコストが発生しているでしょうけれど、社会に対してアクセシビリティの重要性(それがたとえ聴覚障害に限定されたものであっても)を訴える貴重な機会としては、十分機能しているように思えるからです。当該イベントが今年、複数のメディアで割と大きく報じられたのは、紀子さまと佳子さまの来訪による影響もあったでしょうけど。

ですから、最後に当該イベントが将来にも継続される前提において期待(ワガママとも言う)を書かせていただくならば、イベントタイトルはそのままに、自分が齟齬を感じないぐらい内容を拡充していただきたい。障害タイプの枠を超えて、さまざまな団体がアクセシビリティの名の下に集結・協力してイベントを開催する......それは情報アクセシビリティ・フォーラムの協力団体や後援に名を連ねている団体名を眺める限り、決して不可能ではないと思います。そしてWeb業界に働くひとりとして、いや「Webアクセシビリティおじさん」として、是非とも「Webの」アクセシビリティに特化したプログラムもご検討いただきたい。もしそういったプログラムの可能性があるならば、喜んで協力させていただきたいと思います。

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