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「モバイルファースト」なる言葉はいつまで必要か?

昨日みかけて興味深かったのが、"Mobile First" Considered Confusingという記事。著者であるBuckler氏は、顧客であれ同僚であれ、相手が文脈を理解していると確信できない限り、議論において「モバイルファースト」という言葉は使わないことを推奨しています。何の脈絡もなくこの言葉を聞かされれば、その意味するところは確かに謎なわけで、会話で使うにはまず相互の解釈を揃える努力が求められる言葉だと思います。

そういう意味では、記事の主張には同意できるものがありますが、しかし自分にはBuckler氏の解釈がやや狭すぎるように思われました。記事の冒頭、彼はシングルカラムのレイアウトを基本としてデザインをすることがすなわち「モバイルファースト」だ、などと説明しています。しかし、それはあくまでコンテンツを実装する段階での抽象度の低い話であって、「モバイルファースト」はもっと抽象度の高いデザイン理念を指すものと認識していました。かくして、Buckler氏が正しいと信ずるところの「モバイルファースト」と僕のそれのあいだには齟齬があったわけで、何とも興味深い。つまり自分の解釈からすれば、Buckler氏の記事こそが混乱を生んでいるようにも映るのです。

それはそれとして、僕がこの言葉を使うべきではないと感じている理由には、大きく二つあります。第一に、Webアクセスに利用されるデバイスが多様化した結果として、モバイルデバイスとは何か? が既に定義不能であること。コンテキストとしての「モバイル」はまだ定義できるけれど、デバイス種別としての「モバイル」は個人的には死に絶えた感があります。第二に、コンテンツ(単位ページあたりに盛り込む情報や機能)のボリュームという尺度において、確かにモバイルファーストというアプローチは機能し得るけれど、結局のところ大きな(つまり「さまざまな」)スクリーンをもつデバイスからの利用も同時に勘案する必要がある以上、優先度に大差はないと感じていること。

そういえば一年ぐらい前に勤務先のサイトで『「モバイルファースト」終わりの始まり』なんてタイトルのコラムも書きましたけど、改めて「モバイルファースト」という理念(スローガンと呼んでもいいかもしれない)からはいい加減、卒業すべきではないでしょうか。バズワードはバズワードらしく、一定の役目(PCとか比較的大きなスクリーンのみを前提としたデザインからの脱却を導く、とか)を果たし終えたなら、引退をするのが自然の摂理(謎)というものでしょう。言葉の曖昧さゆえのみならず、意図された内容が機能しにくくなってきたという理由において。

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