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シンポジウム「宇宙にひろがる人類文明の未来」1日目

昨日の覚え書き。2010年以降、この時期になると京都大学宇宙総合学研究ユニットの催すシンポジウムに参加するのがちょっとした恒例行事となっているのですけど、今年もシンポジウム「宇宙にひろがる人類文明の未来」に参加しています。ターゲット?に高校生が含まれたことで、プログラム全体としては例年より若干コンパクトになり、1日目は午後のみ、2日目は午前・午後を使うという構成。従い、土曜の朝に東京を出て1泊での参加が可能になったのは金銭的にも時間的にも有難い。

また素晴らしいことに、今年度は予算が付いたそうで、(過去に自分がボランティアで行なったレベルと違い)プロの業者さんによるUstream中継がなされています。自宅からそちらを視聴という選択肢もあったものの、やはりこの種の話は生で聞けたほうが面白いし、そもそもプチ観光とあわせて京都に来るのを楽しみにしていたりもするので。結果的に、イベントの最中に突然大声で喚き立てる名物おじさんの出す声もライブで耳にしたわけですが(苦笑)。以下簡単に、感想とか覚え書き:

Wish It, Dream It, Do It! -宇宙開発を支える宇宙科学-

宇宙科学とは一体何か、というのが主たるテーマの一つでした。自分は以前から理学と工学の双方を包括した言葉と認識はしていたけども、世の中的には理学寄りにやや偏った受け取られ方をしているのではないかなぁというのが、ちょっと心配。杞憂かもしれませんが。あとは人気を博した「はやぶさ」と、非難を浴びた「のぞみ」の違いは紙一重だった、との指摘が興味深い。科学に失敗の2文字はなく、すべてが学習・成長のプロセスだ、という考え方を(方便としてではなく)広めていくことが大事だなと思います。

宇宙教育と海外協力・市場開発

和歌山大学でご活躍の秋山さんのお話。カネが大事だよ、という話になるって冒頭仰った割には、あまりそういう内容でも無かったような?I型、T型、櫛形という人材の類別がすごく面白いというか、宇宙業界のみならずあらゆる業界、少なくとも自分の身を置くWeb業界でも言えることだなと思います。あと、最近はどうだか知らないけれど、プロジェクトマネジメント教育って、もっと早い時期から始めないとヤバいですね。自分は大学に入ってサークル活動でようやくそれっぽいことを手探りで始めたけれど、遅過ぎました。

高等学校における天文教育の現場から

京都市立堀川高等学校での取組みの紹介。探究活動、という言葉はまったく耳慣れないというか、初めて聞いた気がします。この次の井上さんの発表にも通ずる話ですが、専門性の高さを感じました。今時の高校生ってこんなことまでやっているのか!?みたいな。とはいえやはり高校生「だけ」で道を切り拓くには限度があるようにも思うわけで、そこは良きメンターとの出会いを創り出せるかどうか次第なのかな、という気も。

NGC4151(活動銀河核)のブラックホールの観測

まったく高校2年生の発表内容とは思えませんでした。とても素晴らしい取組みができているなぁと。それでちょっとまぁ関係ないけど自分の高校時代というのを懐かしく思い出しもしましたね。通った高校では生物とか化学とか、概ね高校の範囲を逸脱した教え方をする学校で、特に化学の実験レポートなんか相当に気合を入れないとA評価をもらえないんですが......最後の最後でA評価を取れたのが嬉しかったんだよなぁ。今回発表された井上さんほど、自分が当時頑張ったのかは分からないけど。

宇宙の怪傑ガンマ線を捕まえろ!

気球で重いものは3トンもあるとか、凄まじい。あと印象に残ったくだりは、ブラックホールについての言及。そういうものが存在するというのが通説となっているけれど、直接観測の事例はまだなく、存在が確定しているわけではない、と。ブラックホールのようなものがあれば合理的に説明できる事象が数多くあるだけ、かぁ。見もしないであたかもそれが実在するかのごとく思い込んでしまうこと、結構あるかもしれない。

天体の爆発現象で拓く極限物理

ご自身の研究活動を紹介しつつ、物理学と宇宙のつながり、またその可能性を語ったセッション。ひとつ宿題が出されたのは、『明月記』の中で自身が生まれるより前の超新星爆発についても藤原定家が言及できたのはなぜか?という問い。まだ調べてないけれど、とても興味深いお題だと思いました。

パネルディスカッション

質疑応答の中ではいろんな論点が出ましたが、文系の人間がどう宇宙開発にかかわるかみたいな話は、「リケジョ」なる言葉が一部で盛んに論じられている今日このごろだけにタイムリーな印象。自分はそういう理系・文系みたいな分け方はとっくの昔にナンセンスだと思っていますが。あと秋山さんが、年配の人に好かれることの重要性に言及されていたのはなるほどなと思いました。好むと好まざるとにかかわらず、そうならなければ前に進めないことって確かにありますからね......若いときほどくだらねーって思い込みがちですけど。あと、なぜ人類はいまだ火星に行けていないの?みたいな質問に端を発するやりとりも良かったです。質問者の方?がみた動画というのはおそらくJason Pontin: Can technology solve our big problems? | Video on TED.comでしょう。そして、実利に結びつきにくい研究活動に対するモチベーションをどこに見出すかという議論も良かったですね(特に諏訪氏の発言)。面白いからやるんだ、というのは正しいし、またそれがいずれ社会の役に立つと信じることも正しい。必要なのはその信ずる強さ、かもですね。どれぐらいのタイムスパンで時間的・金銭的投資を回収できるかというのは、あらゆる物事に付いて回るお題ですけど、近年そのタイムスパンがどんどん短くなりつつあるように感じられるのが微妙に怖い。そこのバランスをうまく取りながら、人類全体で前進して行けると良いのだけど。

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