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千年女優

今敏、というアニメ監督について知ったのは、大変残念なことに氏の訃報に接したのがきっかけとなりました。お名前だけを聞いてもピンと来なかった自分は、監督作品の一つとして紹介されていた『千年女優』の四文字を見て「ああ、あの劇場には見に行けなかったけれど、主人公が宇宙服を着込んだシーンが妙に気になった映画か……」などと思い出しました。ほどなく、氏が生前に最後に書かれた日記として「さようなら」という文章が話題になって、自分も読んでみたのですけど。何度も読み返しながら、切なさを精一杯反芻しながら、自然と今監督の作品を見たいと思うようになりました。

その想いは、浅野さんが書かれた今 敏『千年女優』への思い。という記事を読んで一層強まり、いざ最寄りのTSUTAYAに行ってはみたものの、店舗の小ささゆえか置かれていませんでした。さてどうしよう……と考えあぐねるうち、GyaO!で今敏追悼企画として『PERFECT BLUE』の無料配信が始まったので、まずは入門とばかりに見てみたのです。いわゆるサイコスリラーというジャンルに属するストーリーで、絵的に苦手な部分もあったにせよ、しかしその展開の素晴らしさには強力に引き込まれました。そして初めて、なるほどこれは大変に惜しい人を失ってしまったかもしれない、と思ったのです。

その後、『千年女優』のDVDを浅野さんからお借りすることができ、ありがたく鑑賞させていただきました。ラストシーンで千代子が口にする最後の台詞については、好奇心が勝って(←言い訳)ググって知ったうえで見たのですけど、やはり独特の展開というか、シーンとシーンの繋ぎ方というのかな、とにかくコンテクストの有り様に強力に魅せられました。映画のなかの世界なのか、そうではないのか?映画の「台詞」なのか、それとも千代子が自ら発した「言葉」なのか?虚構の世界と現実の世界のあいだの行ったり来たりが楽しくも美しく、そして最後には「人間って、人生って、一体何なのだろう?」と思わざるを得ない強烈な一撃をお見舞いさせられる。陳腐な表現を許して欲しいけれど、素晴らしい作品を拝見できたことを、今敏監督には心より御礼申し上げたい。そしてまた改めて、ご冥福をお祈りした次第です。

折しも、早稲田松竹で近く今敏監督追悼3本立て上映が行われる予定。なんとか都合をつけて、まだ見ぬ『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』と合わせて、『千年女優』を大画面で観れるといいな。

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