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11日目(2000/1/5)

現在、朝の6時半過ぎ。シャワーはまだ浴びていない。

昨日の夜は、夕食を食べて部屋に戻って来てから、王さんがParadise Bayで拾った流氷を、これまた王さんのおごりでUshuaiaで買ってあったHeinecken(ビール)でいただいて眠った。かなりよく冷えたし、美味しかった。流氷はとてもゆっくり溶けると聞いていたけど、本当だ。

しかしよく眠った。一度4時半ぐらいに目が覚めてしまったとはいえ、ちゃんとまた眠ったしなぁ。飯は食いまくるし、とにかくかなり太っている気がする。そういえば心なしか顔の肉付きも変わった(増えた!)ような…。外は、穏やかに雲っている。それほど暗くは無い、期待できる曇り方だ。吹雪は、とうにやんでいた。日本では5日の業務も終った頃だな。Y2Kは本当に大丈夫だろうか。朝、王さんがまた日本に電話をかけると言っていたんでまた少し状況がわかるかもしれない。世の中から隔絶されているというのはまさに今の僕のことだな。

王さんが日本に電話をかけて部屋に戻って来た。気候が4月上旬(!?)並に変化したほかは(Y2Kも)特に問題無く平穏に過ぎているらしい。とりあえずヨカッタヨカッタ。

朝食時にはMonikaに謝られてしまった、昨日南極大陸上陸の証明書だけが届けられ、(王さんには届いていた)南極圏到達の証明書が僕に届かなかったことについて。僕はとにかく卒業証明書と同じでそんなものはただの紙きれ程度にしか考えていなかったので、「It's OK.」を繰り返す。今日くれるらしいけど。

最初の上陸を終え、しばらく外を眺めて部屋に戻ってきた。

午前中の上陸地は、かの有名な?Deception Islandだ。まったりしていてふと窓の外を見るとNeptune Bellowsを船が通過するところで、断崖がすぐ側までせまっていて驚く。上陸して出迎えたのはアゴヒゲペンギン。今回の上陸で目にしたのはこの種類ばかりだった。あとジェンツーを一羽だけ見かけたぐらい。

昔の捕鯨基地の名残の中を歩きまわる。当時の飛行機格納庫に行くと、中に主翼と水平尾翼が、そしてその裏手に本体がかなり朽ち果てた感じで置き去りにされていた。なんとなく物哀しい。そういえばその基地の跡を歩きまわっている間にお墓も見かけた。十字架が立っていて、人名らしきものがほられていたので多分そうだろう。

上陸地点から反対側に歩いていく。地面から湯気が立っているのは火山活動のせい。ロシア人の船員がせっせと温泉をこしらえている。僕ははなから入るつもりはなかったので準備してこなかったが、王さんは入るらしい。(入浴は10時半からだ。)しかしこの湯気、実際硫黄の香りがしてかなり温泉っぽい。

切り立った崖からWhalers Bayの外を見渡せるところまでたどり着いて、そして登り、景色を楽しんでいたらあっという間に時間が経ってしまい、さっきの温泉場まで戻ってきたら既に入る人は入ってしまっていたらしい。南極温泉に皆さんつかっているところの写真を撮りそこねてしまったが、まぁ仕方無い。それまでに結構アゴヒゲペンギンを観察したりできたから。器用なことに彼らは足で頭をかくことができるのだ、立ったままの姿勢で。(残念ながら、そのシーンは写真に撮れなかった。)また、石を食べる?アゴヒゲペンギンも見かけた。最後にあったかいワインを紙コップで1杯もらい暖まってからVAVILOVへと戻る。

船は次の目的地であるLivingston Islandへと移動を始めた。寒かったけれど、少しの間デッキに出てNeptune Bellowsを抜けるまで、断崖絶壁を眺める。鳥の巣が崖の途中に横一列に並でいる様は面白い。ちょうどそこに都合よくえぐられた層がある、ただそれだけのことなんだろうけれど。しかし天気はすっかり良くなり、海の青と緑が本当に綺麗だ。浜松町の職場から東京湾を見下ろしては本当に南極なんかに行けるだろうかなどと考えていた昔の自分が懐かしい。

夕食を食べて帰って来た。今、船のLibraryにいる。

午後の上陸は素晴らしかった。どういう意味で素晴らしいかといえば、ペンギンとの出会いという観点において、である。上陸したのはLivingston IslandのHannah Pointというところ。「地球の歩きかた」でも、ゾウアザラシのハーレムで有名だ。ここで見れたペンギンは、ジェンツー、アゴヒゲ、そしてマカロニ!ペンギンである。マカロニペンギンは資性堂の整髪料のCMに登場したCGキャラクターで勇名になった、あの黄色のお洒落な毛並を目のすぐ上あたりにもつ、僕の好きなペンギンである。まさか今回の旅でマカロニを目にするとは夢にも思っていなかったので、本当に嬉しかった。ただ、あくまでもルッカリーではなく、アゴヒゲのルッカリーの中にぽつん、ぽつんと番が巣を作っていただけであるが。

アゴヒゲについていえば、これまではぽつぽつと見かけただけであったが、今回はなんとルッカリーとして死ぬ程見ることができた。しかも、ほとんどの巣で既に雛がかえっている。もっと驚いたのは、ジェンツーのルッカリーである。ほとんどの巣で雛が、しかもかなり成長しているかたちで目にすることができた。とくに、クレイシの形成過程と覚しき雛数羽の集合や、追いかけ給餌を実際に目の当りにすることができた。とにかく親子のペンギンの姿は見ているだけで微笑ましい。とても、良い光景だった。

ほかにもかなりの距離を散策?したけれど、かなりの数、アザラシを見ることができた。帰りしな丘をかなり気合いを入れて追いかけて?登ってきたアザラシの子供の瞳は忘れがたい。そうそう、Zodiacに乗る直前にはアゴヒゲ同士のかなり激しい喧嘩を見た。かなり長い距離追いかけ、突っ突き、攻撃し続けてたな、喧嘩の理由はわからないけれど。おかしかったのは、追いかける方は立ち歩きで、追いかけられる方は腹這いでずっといたちごっこを繰り広げていたこと。下が雪や氷ではなく砂地なものだから、圧倒的に立って逃げる方が速いのに、余程慌て続けていたのか、攻撃される側はずっと腹這いになって逃げていたな。

その後船に戻ってティータイム、かなり甘い莓のケーキとコーヒーを飲んでいたところ、こないだのGunnarが話しかけてきて、また北極点に行った時の話し(なんと水深2000メートルの場所の氷に穴をあけ、体にロープをくくりつけて泳いだりしたそうな)や、アラスカからカムチャッカ半島に抜けるツアー等について話していたら、だんだんとんでもない話しになってきた。

というのも、僕は帰りに1日Buenos Airesで時間をつぶさなければならない(1月9日の晩から10日の晩にかけて)わけだけれど、その10日に市の中心部にある彼のオフィス兼自宅で北極に行った時の写真や映画?を見せてくれるというのだ。さらに、彼の奥さんでZelfaさんは南極旅行の斡旋のような会社(Quark Expditionsにも関係している?)を経営しており(つまり夫婦で別々の会社を経営しているわけだ、実際名刺をいただいて驚いたけれど夫婦それぞれの名刺を1毎に貼りあわせてあるのだ)、南極行きを希望する日本人に対する情報提供の手伝いを(インターネットを通じて)できないか、といった話しに発展してきた。

僕はそれはもちろんできる限りの協力は喜んでするけれど、相変わらず自分の英語力に自信は無いし、サイドビジネスとしてお手伝いするわけにはいかないので、どれだけ力になれるかわからないのに、向こうは既に相当乗り気だ。少なくとも帰国後には僕個人のホームページ上で今回の旅行を紹介し、南極を旅することが実現可能であることや(自分の経験談を通じ)その方法について日本語による情報公開(さすがに情報提供、とまではいえないなぁ)は行うつもりだけれど。とりあえず1月10日の暇を埋めることができそうになったのは良いことだね。その意味では本当に有り難い!

夕食は後部デッキでのバーベキューだった。船はHannah Pointを前に停泊しているものの、雪が降り出しそうなくらいとても寒い。そこでまたGunnar、Zelfa夫妻やタヒチに住む夫婦(名前はまだ知らない)と会話。その夫婦はふだんはフランス語で会話しているが英語も少し話せる。既に二人共仕事はリタイヤしていて、世界を旅してまわっているという。かつて日本にも3週間も滞在したことがあるそうな。すごいねぇ。

しかし寒い、肉、特にソーセージは美味しかったけど。ホットの白ワインを2杯ほど飲む。暖まるけど少し酔っていい感じ。そういや王さんがホッカイロ(Chemical Warmer)を彼らにプレゼントしたらかなりありがたがっていたが、海外にはこういう製品って無いのだろうか。もし無ければ、僕もかなり持って来たけど今まで全然使ってないので最後にロシア人のおばさんにあげようかな。

といった感じで書いてたらもう夜9時を過ぎた。旅も終わりに近付いているっていうか明日が最後の上陸機会になりそうだし支払い(Ship Accountの)の案内も届いた。超健全な日々も残り僅かとなってきた、今日もさっさと寝るとしよう。

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